ドキドキ、と響く互いの心臓の音。こんなにも早いものだったっけ?と夢芽は考える。

「……気をつけてくださいね」

フランシスは夢芽の頭を優しく撫で、体をそっと離した。



恋は、まるでお菓子とスパイス。そんな言葉を夢芽はどこかで聞いたことがある。

恋は、甘い夢を見させてくれる。タルトやケーキ、パフェのように甘い夢。しかし、恋はいつまでも甘いわけではない。痛みや悲しみだって存在する。恋はとても刺激的なものなのだ。

フランシスに案内され、夢芽は写真やパズルで見たことのある観光地に来ていた。世界中から多くの観光客が訪れるモン・サン・ミシェルだ。

実は、ただの島ではなく修道院。巡礼者も多く訪れる。

「素敵ですね〜。ずっと見てられます!」

美しい修道院を、夢芽はうっとりと眺める。

「小さい頃は、モン・サン・ミシェルはお城なんだと思ってました」

夢芽がそう言うと、フランシスが「ふふ」と笑う。

「確かに、僕もそう思った時ありますよ。見た目はお城ですよね」