「ずいぶん気持ち良さそうだね。」


だがその声にびっくりして、閉じそうになった目を開く。そこには要の整った顔がすぐ近くにあった。
突然の事態に顔が熱くなるのがわかる。ドクンドクンと胸が鳴った。
すると要がまたクスクスと笑って頭を撫でながら「顔真っ赤っ。かわいいなぁ。」という驚くべき発言をした。
それによって顔の熱を更に上昇させながらもこんなに軽くかわいいと言ってくる要の女への慣れ加減を感じさせられた気もした。

その時「あ」と彼が呟き頭を撫でていた手を止めた。それを合図にするかのように顔を上げると「何か飲み物いる?」と尋ねられた。


「えっ…と…何がありますか?」

「なんでも?凪沙のご要望とあれば」


優しい微笑みを浮かべながらまたもや赤くなるような言葉を言われ、恥ずかしがりながらも「ミルクティ下さい。」と答えた。

「ホット?アイス?……って雨に濡れたし、ホットの方がいいかな?今はまだ寒いしね。」

「はい。」


私の返事を聞くと、要はカウンター席を指差して、「好きな所に座って」と言ってカウンターに入っていく。
私は座る場所を一瞬迷ったが、真ん中の方がいいような気がして、とりあえず中央にある椅子に座った。