要という人に連れられて来られたのは、少し裏の路地に入った所にある洋風な外観の店だった。看板に目を移すとWolf childと書いてある。


「狼…少年?」

「正解」


要はにこっと笑うと、その店のドアを開けて私を中に入るよう促した。
私はそれに従い中に入ることにした。

店内は落ち着いた雰囲気で、ここだけ時間時間が止まっているような、そんな感覚がした。
おそらく電気も付いておらず、人もいないからなのかもしれない。

そんなふうに私がぼーっと周囲を眺めているうちに、要は左奥のドアに入っていったらしい。
しばらくすると中から出て来て私に向かい何かを投げた。


「わっ」


その瞬間目の前は真っ暗になる。頭に被った物を手に取るとタオルがあった。
私はとっさのこと過ぎてわからず、どうしようとそれを凝視していると要が歩み寄ってきた。


「何?濡れるのが趣味だった?」

「えっ!?ちっ…ちがっう…」

「なら拭けばいいのに…。」


そう言って彼はクスクスと笑うと私の手からタオルを奪い、頭を拭いてくれた。その手つきが優しくて、まるで頭を撫でられている気がする。
うとうとと、気持ちよさのあまり瞼が重くなりそうだった。