留学を決めたのはつい数日前だ。しかも短期では無く、長期の留学。もうこの高校に戻ることは無い。いざ心を決めると、案外さっぱりしたもので、寂しさとか悲しさみたいなものは無かった。

元々、留学の話はあった。春香さんが短期の留学をした時、そういう話も出た。でも俺は踏ん切りが付かなくて、その時は断った。でも今回は違う。自分にとってちょうど良い機会だと思った。

癪に障るけど、やっぱりちひろに振られた影響が大きい。正直、自分でもここまで感情が乱れるとは思って無かった。

ちひろから別れを告げられた日、本当に腹が立ったし、悲しかった。でもどうしようも無い。

春香さんは何故かこうなることがわかっていたみたいだった。

「だから言ったでしょ。玲とあの子は全然合わないの。あんな子、最低よ。でも大丈夫、私はずっと玲を大切に思ってたから。私は玲が気の迷いであの子を選んだこと気にしてないから」

春香さんの所に戻るのは簡単だった。

でも流石にそれは春香さんに失礼だと思ったし、自分の気持ちの整理も付かなかった。