大嫌い、だから恋人になる

「えー、それって本当?」

「本当だって。あいつもう時期来るぜ」

白崎君の声はわかる。だけど誰を待ってるんだろう。

「けど白崎、お前もひどいな。あの子のこと別に好きじゃないんだろう。何だっけ?ちひろとか言ったっけ?」

血の気がサーッと引くのがわかった。

「そりゃそうだろ。あんな地味な中学生。誰が恋人なんかにするかよ」

白崎君の声は冷たい。

「だったら何で声掛けたの」

女友達が聞いた。

「なんか暇だったから。それに面白いじゃん、ああいうのからかうの。あいつ、俺に好かれてると思ってるんだぜ。笑っちゃうだろ」

「なにそれ、かわいそー」

女友達が全然かわいそうに思ってない調子で言った。

「俺さ、あいつに家出しろって言ったんだ。なあ、みんなで賭けないか?あいつが本当に来るか、それとも来ないか」

「流石に来ないだろ。そこまでバカじゃないだろうし」

「いや、あいつは来るよ。そこまでバカだから」

私はみんなに気付かれない様にそっと家に戻った。

惨めだった。家に帰ってわんわん泣いた。初めての失恋、しかもこんな形の。

それから何日間か私は寝込んだ。

白崎君の連絡先は全部消した。