〈琴音STORY〉

あの人が、音を可愛がらなくなったのはいつからだろう。

それくらい、昔なんだな。

奏と音を比べだしたあの人は、奏ばかりを可愛がった。

私はただ、音を抱きしめるだけしか出来なかった。

そしてあの日、音はピアノが弾けなくなり倒れた。

音は気づいていないみたいだけど、コンクール近くくらいから、瞳に輝きが無くなってたんだ。

最初は楽しそうに弾いてたピアノ。

だけど、あの人の所為で好きなピアノを弾いていても笑顔は見えなかった。

倒れた後、目を覚ました音。

すごく、すごく安心した。