「律くん、ピアノ練習しよ」

「おう」

律くんもショックを受けているに違いない。

そのショックを和らげる為に、ピアノの練習をしているように見える。

「あっ、ごめん…間違えた…」

「あ、ううん。大丈夫気にしないで」

珍しい。

律くんが間違えるなんて。

「じゃあもっかい始めからね」

「うん」

手を掛けたけど、全く弾く様子が無い。

「…律くん、あのね。

辛いのは分かる。私も辛いから…
だけど、笑わないと。

そんなに思い詰めた顔しちゃダメ」

「…そうだよな…うん、そうだよ…

1番辛いのはおじい様自身なんだもんな」

「うんっ」

笑顔になると、律くんは私の頭を撫でた。

「よし、練習しよう」

「うん!」