「そろそろ寒くなってくるね」

「ですね〜」

葉の色が変わりかけてきている。

「おじい様、見てください。
すごく綺麗ですよ」

「ほぉ…」

「来年の春は桜だ。
一緒に見ような、親父」

敦さんは、静かに泣いていた。

落ち着いている声とは真逆。

すごく泣いていた。

涙を、沢山流していた。

「桜…」

「絶対、一緒に見ましょうね?

敦さん、そろそろ入りましょう」

「そうだな」

涙を拭うと、家の中に入った。