コイノネイロ

おじい様の記憶は、2ヶ月としないうちに、無くなった。

私達の事も全て忘れ、記憶を維持する事すら出来なくなってしまった。

「親父、散歩行こう」

「…お前は誰だね」

「俺だよ、敦。
親父の息子」

「はて…」

悲しそうな顔をしている敦さん。

虚ろな目をしているおじい様。

見ているのも辛い。

「敦さん、私も一緒に行っていいですか?」

「ああ、勿論さ」

脚力が無い為、おじい様を車椅子に乗せ玄関を出た。

散歩と言っても、敷地内での散歩だ。

敷地外だと、何があるか分からないから。