コイノネイロ

「あ、あ〜…お手洗い行ってきます…」

恥ずかしさで、逃げるようにお手洗いに向かった。

「ふぅ…」

時々、神宮寺さんの視線が痛い。

律くんと神宮寺さんが一緒にいると、胸が痛む。

譲りたくない…

「間宮さん」

「…っ」

振り返ると、神宮寺さんが立っていた。

「あなたと律さんが結婚すると、苦労するのは誰だと思う?

律さんと、律さんのお父様とお母様よ。
分かるでしょう?」

「それはっ…」

「困らせたくないのなら、潔く諦めなさい。

あなたは、ただの庶民。
律さんにピッタリなのは、わたくしよ」

分かってる…

そんな事分かってるっ…

「もう一度言うわ。

わたくしと婚姻しなければ取り引きは致しません。

あなたは、潔く諦めなさい」

神宮寺さんがいた場所を、見つめるしか出来なかった。

何度も何度も、涙を流した。