「音、通しで弾くよ」

「うんっ」

ココアを1口飲むと、律くんの合図で弾く事にした。

闇雲に弾くな。

あの人が、奏さんに言っていた事。

勝つ為だけじゃない。

皆が満足になる音を奏でる。

プロのピアニストになる為には必要な技術だ。

「流石音。

上手だった」

「えへへっ…

律くんと一緒だからだよ」

私が言うと、律くんは笑顔で頭を撫でてくれた。

「あ、もう1時だ…

そろそろ寝ようか」

「うん」

時間が過ぎるのはあっという間だ。

「明日学校だけど、大丈夫?」

「うん、大丈夫〜。

律くんは大丈夫?」

「俺は全然平気」

ココアを飲むとキッチンに向かい、マグカップを洗った。

「サンキューな」

「いえいえ」

「じゃ、おやすみ」

「おやすみなさい」

部屋に戻り、眠った。