「音!」

中盤まで弾き終えると、律くんが勢いよく入ってきた。

「どうしたの?」

「如月さん達が最優秀賞になったのは、元々仕組まれてたみたいだ」

「え?」

「如月さんのお父さんは、政治家だった」

えっ…

つまり…?

「自分達の身が心配なら、娘達を優勝させろ、そう言ったんだと思う」

「…っ!

そんなのっ…
不公平だ!」

「ああ。

現実にもあるんだな、こんな事…

音、このままだとずっと優秀賞のままだ、技術を身につけたとしても。

どうする」

律くんは聞いた。

答えは、1つしかない。

「本気で戦う。

いくら脅されていたとしても、脅しに負けない演奏をする」

「ああ!」

その日から、9月のコンクールに向けて毎日練習した。

朝から晩まで。

律くんの話を聞いたおじい様達は激怒。

次のコンクールは平等に、と直訴した。

おじい様達の為にも、頑張るんだ。

もう悔しい思いはしたくない。

稀に最優秀賞取れない時もこれからあるかもしれない。

でも、最優秀賞を絶対に取りたい。

皆が応援してくれているから。

私には夢があるから。