夏休み明け。

コンクール当日。

最後が出番だ。

いつも通り、他の人の演奏は聴かない。

お茶が入ったカップを持つ手が震える。

その手を、律くんは包んでくれた。

「大丈夫。

きっと大丈夫」

律くんの声も微かに震えていた。

「うんっ」

そうだよ。

律くんが傍にいてくれるんだから。

ソロじゃないんだから。

信じるんだ、私自信を。

音と友達になるんだよ。

「ステージ袖にお願いします」

「「はい」」

音と。

ピアノと。

会場の雰囲気と。

友達になるんだ。

出来損ないかもしれない。

だけど、今この時だけは、出来損ないなんかじゃない。

そう信じるんだ。

「音、弾くよ」

「うんっ」

息を揃え、私達は鍵盤を押したーー