コイノネイロ

「音〜、ピアノの練習してく?」

律くんがドアを開けた為、ピアノが見えた。

その瞬間、あの人と川上健二を思い出してしまった。

「ーー…りっ…」

「え?」

「無理っ…

私には無理っ…」

「何が?音?」

「ピアノ弾けないっ…」

私が言うと、律くんは目を見開いた。

「弾きたくないっ…
怖いっ…」

律くんは、悲しそうな顔をしていた。

「そっか…
分かった。

音の気持ち次第だもんね。今は、弾かなくていいよ」

ドアを律くんが閉める時、ポスターが見えた。

コンクールのポスターだ。

夏休み明けに、コンクールがあったんだ。

律くんも楽しみにしてた。

私もだ。

だけど、だけど…

無理…