コイノネイロ

「お帰りください!!!」

「「…っ」」

詩乃さんは、珍しく声を荒らげた。

「あなたに!音ちゃんの事を言う資格はありません!

さっきから聞いてれば、音ちゃんを馬鹿にするような事ばかり!

音ちゃんは出来損ないではありません!
あなたに教えてもらわなくても立派なピアニストになれますわ!

もう来ないでください!」

「なっ…」

「ふぅ…

お帰りください」

「…失礼致します」

私の荷物を持った詩乃さんが、怒った顔をして戻ってきた。

「何よ出来損ないとかピアニストにはなれないとか!
はーイラつく!
私あーゆータイプ大っ嫌い!」

「俺も嫌い。

音、気にする事はないんだからな?」

私は、曖昧に頷く事しか出来なかった。