コイノネイロ

「よし、いいよ」

「音ちゃん何があったの…?」

詩乃さんの問いに、思わず頭に手で押さえてしまった。

「音!?」

その時、チャイムが鳴った。

「はーい!」

「音…」

「音さんはこちらにお帰りになっていますか?」

「はい、いますよ」

あの人の声だ…

「こちらお荷物です。

それにしても、音さんには才能がございますのに、全くピアノが弾けなかった。
出来損ないですわね」

「「っ!」」

「はあっ…はあっ…」

折角治ったのに、また息が上手く出来なくなってきた。

「あれじゃあ、お父上を越えるピアニストにはなれませんわ。

わたくしが時間を割いてお教えして差しあげてるというのに…

プロのピアニストになるには、わたくしがお教えした方がよろしいのですよ。
もう少しーー」