そう思い続けると、間違えやすくなってしまった。

何回弾いても失敗する。

その度に風間さんが怒る。

「何故こんな簡単な曲を弾けないのですか!

お父上はあの川上健二さんなんですよね!?

ならば弾けるはずでしょう!
ほら、さっさと弾きなさい!」

「はっ…はいっ…」

どうしようどうしようどうしようどうしよう…

弾かなきゃ…

上手く最後まで弾かなきゃ…

怒られる…

「あっ…」

「ハァ…

これで何回目ですか!
音さん、出来損ないですね!」

「ーー…っ!!!」

「それではお父上を越えるピアニストにはなれませんよ!

何故コンクールではあんなに素晴らしく弾けていたのに!

ご飯食べたければ、最後までしっかり弾いてください!」

「ごっ…ご飯はいりませんっ…

今日はもうっ…」

「…そうですか。じゃあおやすみなさいませ」