「は、はい…」

なんだろう…

怖い…

「では今日から練習を始めましょう」

ピアノの前に座ると、楽譜が渡された。

あの人の得意曲。

1度コンクールでも弾いた。

弾けるか分からないけど…

「では、まずこちらの曲を通しで弾いてください」

「はい」

あの時は律くんがいてくれたから弾けたと思う。

律くんがいない時に、通しで弾いた事なんてない。

でも、弾かない訳にはいかない。

そう思い、鍵盤に指を掛ける。

深呼吸をして、ピアノを弾き始めた。

落ち着いて…

ゆっくり…

焦らず…

だけど、ある場所で間違えてしまった。

「音さん!」

「…!!!」

「何故間違えるのです!

最初から弾いてください!
最後まで通しで弾けなければ、今日はご飯抜きですわ!」

そんなっ…

どうしよう…

ちゃんと弾かなきゃ…

上手く弾かなきゃ…