「ん?音?どうした?」

「あ、ううん!なんでもない!」

やばやば。

練習しなくては。

「音ちゃん」

「おじい様!なんですか?」

覗き込んで来たおじい様。

「先程来客がいたのじゃが…音ちゃんに暫くピアノを教えたいと言っておったんじゃよ…」

「私…に?」

誰がなんの為に…?

「音ちゃんの父親が、ピアニストの川上健二さんだという事も知っておった」

「っ!」

「勿論、儂は断った。

だけど中々引き下がってくれなくて…」

そっか…

おじい様はちゃんと断ってくれたみたいだし…

これ以上迷惑はかけてられない。

「分かりました。

少しの間でしたら」

「音ちゃん…

ありがとう…」

「おじい様、その人女の人?」

律くんはそう質問した。

「あぁ、勿論じゃ。

女性じゃなかったら意地でも断ったよ」

「そう…」

女の人なら安心だ。