「音、どーしてその日に連絡してこなかったんだ?」

蘭子が聞いてきた。

「だって…私パニクってたし、目を覚ますまで危険な状態だったし…

2日間も眠ってたからそれどころじゃなくて…」

「…そっか。悪い悪い。

川上健二、謝りに来た?」

その問いに、首を振った。

「そう…」

「音ちゃんの父親だったよな?

雑誌にこれ載ってた」

望月くんが見せたのは、雑誌だった。

その内容は、奏さんが逮捕された事、奏さんの父親が川上健二だと言うことが書かれていた。

「もう、ピアニストとしてはいれないよな…」

「いや、この騒ぎが治まれば、またピアニストとして戻ってくる気がする」

「え…」

「だって、川上健二はただ単に奏さんの父親ってだけであって、犯人では無いし。

腕は確かだから、また戻ってくるよ」

律くんの言う通りだ。

「私も律くんと同じ。

だけど、戻ってこなかったとしても、待ってる。

プロのピアニストとして、ステージで」

「「「うん」」」

皆が揃えて頷くと、律くんは笑顔で頭を撫でてくれた。