コイノネイロ

〈律STORY〉

奏さんの持ってるナイフは、迷わず音に向いていた。

「音、警察に電話!」

咄嗟にその言葉が出た。

奏さんは、音を殺そうとしている事に気づいたからだ。

音は震えながらスマホを手に取った。

その時だった。

「なんでアンタばかり…

死んでしまえ!」

ナイフを取り上げるとか、そんな事は考え付かなかった。

ただ目の前で、音が殺されようとしている光景が広がっている。

「音!」

音の前に出たのと同時に、激痛が腹部に走った。

立っているのが辛くなるくらい痛くて、その場に倒れ込んだ。

ボヤける視界の中で。音が俺を見ながら泣いている姿が見えた。

「律くん!」

音が無事だった、それだけで安心した。

段々薄れていく意識の中、音の声だけが聞こえてきた。

そして、俺は意識を手放したーー