コイノネイロ

「音ちゃん違うわ!」

「違くありませんっ!

私の存在そのものが皆を傷付けるっ!
私が居なければこんな事にはならなかったっ!

ママだって!好きな人と離婚する事無かったっ…

パパだってお姉ちゃんだってっ!
ママと離れる事無く幸せに暮らしてたと思うっ!

私が存在したからっ!

皆の幸せを奪ってしまうんだっ!

私なんてっ…

最初から存在しなければ良かったんだっ…!

もう私に関わらないでくださいっ!

私はここに居てはならない存在なんです!だからっ」

「出来ないわ、そんな事」

詩乃さんは、静かな声でそう言った。

「どうしてっ!」

「どうしてですって?

それは、音ちゃんが大事だからよ」

「…っ!」

詩乃さんは、私の腕を掴んだ。

「私は、音ちゃんを家族だと思ってる。娘だと思ってる。

家族だから、ほっとく事が出来ない。
違う?

音ちゃんは、私の親友の娘なの。
それに、自分の息子の大切な人。

音ちゃん、音ちゃんはここに居ていいのよ。

言ったでしょ、音ちゃんの居場所はここだって。

存在してダメなら、音ちゃんを引き取ったりしない。

琴音ちゃんだって、音ちゃんの為に離婚したりしないわ。

もうそんな事、言っちゃダメ。
分かった?」

「詩乃さっ…」

そんな事言ってくれるなんて思ってもみなかった。

家族だって…

娘だって…

言ってくれるなんてっ…