コイノネイロ

その日の放課後、蘭子達と別れた後、少し遠回りして帰る事にした。

「そうだ、音、家に行ってる?」

「あ、うん。土曜日とかによく行ってるよ。

詩乃さん達のおかげだよ」

ママとの思い出の場所。

無くなるかと思った。

「許さない…なんでアンタばかり…」

「「っ!」」

奏さんが、目の前に立っていた。

こちらを睨み付けながら。

「なんで褒められてない見放されたアンタが上手くて、褒められた私が下手なのよ…

全てあんたの所為だ…」

すると、何処からかナイフを取り出した。

「…!」

「音、警察に電話!」

「えっ…」

「早く!」

「う、うん!」

物凄い形相の律くんを見て、私の身体は動いた。

110…

手が震える。

「許さない…

死んでしまえ!」

「音!」

警察に電話が繋がった時、ナイフをこちらに向けた奏さんが走ってきた。

私の前に律くんが立つと、何かの鈍い音が聞こえた。

それと同時に呻き声も。