「うっ…ふっ…」
近くの橋の下に私達はいた。
そこで律くんは黙って、泣いている私を抱きしめてくれた。
ただ私は、あの人をパパと呼びたかった。
娘と、認めてもらいたかった。
なのに…
結局は上手い下手で比べられた。
奏さんも上手い筈なのに、下手とか言って。
私に恐怖を感じ、憎くなったからあんな酷い事をされて。
私は何の為に苦しんで、大好きなピアノを辞めたんだ。
あの人の勝手な感情に振り回されて。
ママも大変な思いして。
許せないよっ…
「私の6年間返してよっ…大好きなピアノ辞めたのにっ…返してよっ」
「……」
律くんは何も言わず、更に強く抱きしめた。



