「…!」

知ってる…

この曲知ってるっ…

「うあぁぁぁぁあ!」

「っ、音!?大丈夫!?」

「ごめんなさっ…でもっ…弾けない聴きたくないっ…」

だってこの曲はっ…

「倒れた時に弾いてた曲だからっ…」

「…!ごめん!音ごめん!」

息が乱れている私を、律くんは抱きしめてくれた。

律くんはすごく慌ててる。

「ごめん音っ…ごめんっ…また音を苦しめたっ…俺の所為でっ…何回音を傷つけるんだっ…苦しめるんだ俺はっ…」

痛いくらい、私を強く抱きしめた。

「律くん…律くんは悪くないよ」

「え…?」

体を離して、私の顔を見た。

涙を目に溜めていた。

「私、律くんのお陰で生きていられる。ピアノを弾けている。律くんのお陰で、すごく幸せ」

「幸せ…?」

「うん。行く場所が無い時、律くんは私を親戚達から庇って面倒見るって言って説得してくれた。

あの人の所為で大好きなピアノ弾けなくなったけど、律くんのお陰で怖くなくなってまたピアノを弾けるようになった。

律くんのお陰で、詩乃さんや敦さんや詩ちゃんやおじい様に出会えた。

何より、律くんの彼女になれて、すごく嬉しいし幸せだよ」

「ーー…っ!」