「ねぇあなた…」

「ん?」

「お願いがあります」

「お願い?」

母さんがお願いするなんて珍しい。

「音ちゃんと琴音ちゃんが住んでいたあのお家、音ちゃんがいつでも帰れるように…その…」

母さん…

「詩乃は相変わらず優しいな。俺もそう思ってた。家まで無くなったら音ちゃん…」

確実に…

「音、大丈夫かな…」

「律、音ちゃんにはお前しかいない。音ちゃんを、守るんだぞ」

「…うんっ」