〈律STORY〉

琴音さんが倒れた理由は、俺と母さんしか知らない。

詩が救急車を呼んでいる時、音は今にも泣きそうな顔をしていた。

微かに身体も震えていた。

「しっかりしろ。琴音さんを仰向けにするから、手伝え」

正直、理由を知っている俺でもパニックになりそうだった。

だけど、音がパニクってるのに、俺がしっかりしやきゃいけないじゃないか。

だから、務めて冷静に音に言った。

音は頷き手伝ってくれた。

本当は俺だけでも出来たんだ。

でも、音にしっかりさせなきゃと思い手伝わせた。

それから音はずっと泣きっぱなし。

実の、凄く大好きなお母さんが倒れたんだもんな…