〈律STORY〉

あの人の弾くピアノの音は凄かった。

プロだ。

やっぱりプロだ。

自分が憎い。

こんな奴大嫌いなのに心惹かれるなんて…

音を傷つけた奴なのにっ…

「奏や、観客の皆様のおかげで、ピアノを弾けるんです」

ーーはっ…

ナニコイツ…

イラつく…

巫山戯んな…

「勝つ…」

「っ、音?」

「勝つ…絶対勝つ…」

音は、静かにそう呟いていた。