最後のコンクール。

最後って、決めていたわけでは無い。

アナウンスが流れて、私はステージに立った。

お辞儀をして、椅子に座る。

そして、課題曲を弾き始めた。

その課題曲がなんだったのかは、覚えていない。

思い出したくない。

中盤に差し掛かる。

そこからだった。

私がピアノを弾けなくなったのは。

指が動かなかった。

会場にいた人達がざわざわし始める。

ステージ袖にいたママの顔が強ばっていた。