「雅実も来てたんだ。」

そう言ってにっこりと、笑う。

「え、ええ。」

後ろから彼女が顔を出す。

彼女の右手は、彼の背中の裾を握っている。

「こんにちは。」

彼女もにっこりと笑った。

…本当、可愛らしい人だ。愛想もいいし

若い。

「あー、ご一緒…」

します?なんて、おかしいか。

最後まで言い切る前に躊躇した。

答えたのは、彼女。

「いえ、私達は…雅実さんがいらっしゃると…ちょっと。ねぇ?」

そう言って可愛らしく田中さんの顔を見つめる。

同性から見ても、この仕草は可愛い。

それに田中さんが、少し考え

「場所、変えようか。」

彼女にそう言った。

「じゃあ、雅実。また、連絡するね。」

そう言って私に背中を向けた。

それに彼女が続く。

手はまだ、田中さんの背中を握ったまま。

私の方を振り向くと、軽く睨むように去って行った。

…唖然。

何あれ。

いや、彼女も、だけど…

『場所、変えようか。』

って、何あれ。