…そんな事、聞くものだろうか。

というか、彼から質問することも珍しいけれど。

「田中さんは?」

「キス?」

「ありますよね?したことくらい。」

「…まぁ。」

「キスが出来るって…やっぱり…」

「え?」

「キスが出来るって、やっぱり、特別なんだと思います。す、少なからず…好意というか…特に…その…」

「ごめん、よく…分からない。」

「キスをしたいと思うのは、少なからず相手の事を、す、好きなんだと思います!!」

「好き…?」

「したいと…思いました。私は。」

さっき。だから、振り向いた。その事を彼も分かっているだろう。

言ってしまって急激に恥ずかしくなる。

顔が見られずに済む前で良かったと思う。

…う

重い…

止ま…る?そう思うとすぐに

いや、足を着いて止められた。

それに振り向いた瞬間、風に舞う髪を避けもせず

「ごめん、我慢出来ない。」

そう言って、私の頭を優しく、抱えるようにキス。

離された唇に、目を開けると

もう一度、軽いキスをされる。

「これ以上は、同じ比重になってからに、する。」

そう言った彼に頷いた。

…この人も、こんな、目をするんだな。

こんな、感情的なキスも。

再び漕ぎ始めたロードバイクに

今度はこの距離さえ…いらないと、思った。