そこから、自転車を下りて押し、ベンチの横に停めた。

私達も、そのベンチに腰かける。

「この坂は急だったね。ごめん。あっちの緩やかな坂にすれば良かった。」

彼の視線の前方に緩やかな坂が見えた。

「田中さんは、普段からロードバイクを?」

「うん。ジムも行くけど。外の方が、爽快かな。」

「確かに。凄い気持ちがいい。」

そう言って、空を見上げた。

「タンデムは初めてだけどね、思ったより…」

「思ったより…?」

「楽しい。」

「うん、私も。こ、怖かったけど。」

私がそう言うと、田中さんはまた…笑った。

それから、ドリンクを私に渡すと0を取り出した。

【死ぬか思ったー。何が起こってんのか分からんしー。】

「あ、ごめん。そうか、バッグの中だと声しか聞こえないもんね。」

【そうや、雅実の脈拍マックスやし。実雅は平常時やし、状況が分からんわ。どないなってんねーんつって。】

「ん?普段も別に目がないんだし、かわらないんじゃないの?」

【俺は、目で判断してるんじゃないからなー。】

「“俺”!?0ちゃん、男の子なの !?」

思わず、0を持ち上げて底を見た。

【…あほか、AIに性別ないわ。ジェンダーレス。】

「“俺”って言うからでしょ?」

【ジェンダーフリーの時代やからな。てか、何で底を見るねん。】

「だって、男の子と言えば…さ。」

【目も、鼻も、口も、手足もないのにちん○んだけ、ついてるわけないやろー!】

「あ、本当だね。」

おかしくなって笑う。

【そもそも、付いてたとしても、やで?そんな底にはつけへんやろ。】

「あはは!本当だ!人で言うと、足の裏みたいな!?あはは!」

【おれのボディから見た比率で言うと…場所はこのへんか。】

そう言って、それっぽい場所を1点光らせる。

「バカだ!0ちゃん!バカだ!」

大ウケしていると気を良くしたのか

【大きさの比率としては、こんくらいか?】

と、大きさを光らせて表した。

「そこは、見栄張って大きくしないの?」

そう聞いた私に

「雅実、そろそろ…」

田中さんが制止する。

…しまった。

つい…

品のない会話を…