「脳は…そういう仕組みになっているんです。忙しいと怒りを覚えない。目で景色を見て、脚で漕いで、手で舵を取る。ここに会話が加わっても…怒りは出にくい。」

…賢い人はそんな所から?

怒らせないように言葉を選べばいいじゃない。

まったく…。

方向の斜め…

「え!?これ、田中さんが考えたの!?0じゃなくて!?」

そこで、その事に気づいた。

今日のこの“デート”

0でリサーチしたわけじゃないんだ。

「うん。」

うん?

私の…為、だよね?

「笑ってくれたらいいなって。いつも、怒らせるから。」

笑って…無かったかな。

「重た。漕いで。重い。」

…あ、足止まってた。

「ご、ごめん。」

重い…って言った?

デリカシーよ。

「え、お、ちょ、」

今度は急に重くなって、どうにもならない。

「な?重いだろ?本体が重いんだよね。」

はぁ、本体か。そうか。

だって2台分だもんな。

私を重いって言ったわけじゃないのか。

……

あれ?

何か話し方がフランクに…

あ、もしかすると、彼も脳が今、忙しいのかもしれない。

だから、言葉がフランクに…