【うっへー、長かった】



「え、半年も経ってない」

私の言葉に、なぜか田中さんが目を泳がせた。



「だいたいさぁ、品川さんの登場、もうちょっとで駄目になるとこだったじゃん、教えてくれたら良かったのに」



「…ごめん」



「あ、いえ、田中さんじゃなくて、ですね、0ちゃん」



【人間は紆余曲折あるほうが、燃えるもんや】



なっ!

「ちょっと、あのねぇ、もう少しで…こっちは……結構悲しい思いをして…あ、これも?本当に駄目になってたらどうしたのよ!?」





【悲劇は、シェイクスピアだからこそ、美しく。現実には、いりません。悲劇なる前に何とかしたわ。雅実は妙にネガティブ】



「なんせ、年老いたブスだからさ」



「『年老いた』?人生100年時代に28才の若輩者が…何を?それに、ブスだなんて…」

田中さんが眉を寄せてたしなめる。





そうだ…この人はそんなこと…思ってない。

品川さんが言った事に踊らされただけだった。



…これからは、この手の温もりだけを信じていこうと思う。



「すぐに結婚しなきゃならないのか?」



…そうだ、成婚!

したくないのか



【さぁ、両家の兼ね合いとかあるやろし…任せる】



どこまでも緩いmakerだ。



「20代で、子供が一人…だったよね。少し余裕があるから…“恋人”でいてもいい?」



「うん!」



「恋人期間に関西へ行こうか」



【イェー!マイホーム!】



「行ったことないんでしょ?」



【心のホーム】



「心はあるのか?」



【………】





どうやら0にも分からない事があるらしい。