「焼けたよ。先ずはこのままどうぞ」



熱々の大きなたこ焼きをハフハフ言いながら

「……お出汁の味、美味しい!」



「色々あるよ、塩、ポン酢、醤油、ソース…お好みでどうぞ」



そう言ってポンポンと器用にお皿に入れてくれる。



「変わり種も焼けるよ」



「あ、でも今日はオーソドックスのでお腹がいっぱいになりそう…残念ながら変わり種は次回」



「……そうしよう」

残念って言ったのに、何故か田中さんは嬉しそうに笑った。



腕捲りして、額に汗を滲ませて、せっせと焼いてくれている。

手際が良すぎる。



普段の彼から想像も出来ず…

これもまた、自分で、私の為に考えてくれたのかと思うと…

箸も進む…じゃなくて、胸がホカホカしてくる。



たこ焼きは本当に美味しかった。

外はカリッと中はとろっと…



ソース、塩、ポン酢のループから抜け出せずにいた。



時々醤油。



マヨネーズも少し…



「美味しーい」



今日のお酒は、ビール。



あー…………幸せ。





「雅実、話があるって…言ってたよね」



「そだ、そうだった!」

またしても副音声の切り替えをしくじって



「聞くよ、何?」



「食べてからに…してもいいでしょうか?」



「うん、分かった」



たこ焼き頬張りながらは言えないだろう。

いや、改まっても…言えるか



【…雅実…】

「はい!大丈夫!」



0の低い声に慌ててそう返事をした。