「両親が老いて来たとか、このまま一人でずっと生きていくのかとか、回りがどんどん結婚するのに不安になって…とかではないけどね」

笑ってそう言った。



耳が痛い

耳が。



「ふと、結婚したいくらいの女性に出会いたいと思ったんだよね」



届いたワインのグラスを合わせると



「俺の“成婚条件”、“結婚したいと思うかどうか”なんじゃないかと疑ってる。0は教えてくれないけどね」



“カップルごとに0に課せられた条件”か。

私と田中さんは“気持ちの同じ比重”だったな。



「あれ…、香川さんその“成婚条件”ってお相手が見つかってからのものなので、今はまだ分からないですよ?」



「あ、そうか!相手あることだもんね。自分の事だけだった。こういうとこが駄目なのかな、自惚れの強いとこ!」



いや、自惚れてくれないと駄目なくらいの…



「香川さんくらいなら、当然です」

「顔の話?」

「そうです。あ、それだけじゃないですよ、でも……」

「うん、俺もこの顔で良かったって思ってる」

冗談ぽく、香川さんはそう言った。

そりゃあ、この顔に産まれたらこの顔で良かったと思うに違いない。



「…でも…それなりに苦悩はあるよ。顔だけで選んだのか?…とかね」



彼は心を探るような瞳を私に向けた。