その手から伝わる体温に感じるのは…

不快感に近い、違和感だけ。



「僕に女心は分かりません。だけど、分かりたいと、そう想う人がいます。雅実の気持ちを知りたい時は、あなたではなく、雅実から聞きたい。それが、真実だと思うから」



自分の手の上から、彼女の手を外す。



「触れる手に特別な感情を(いだ)けるのは……彼女だけです」



そうだ、舞い上がる程に

雅実と繋ぐ手は“いいもの”だ。



目の前の品川さんが青ざめ、キュッと下唇を噛んだ。



「物凄く、素敵な男性でしたよ、雅実さんと一緒にいた方。お二人がとても楽しそうで、見てるこっちが恥ずかしくなっちゃった」



笑っているのに、睨むような表情で



「雅実さんが、触れる手に特別な感情を抱くのは…あなたじゃないかも、しれませんね、実雅さん。それとも彼女は、誰とでも手を繋ぐのかしら?」



そう言うと彼女は俺に背を向けた。



雅実との約束は日曜日。



【便りのないのが…】



雅実からは特に何も聞いていない。



雅実は向こうの男性とも手を繋いでいたという事なのか…



そんな事まで報告の義務はない。



だけど、品川さんからより…

雅実に、聞けばいい。



聞きたいのに、聞きたくない。

おかしな矛盾した感情が、またしても俺の中にやって来た。



悩むくらいなら、雅実に会ってからにすればいい。そう自分に言い聞かせた。