雅実にとって、俺はどんな存在なのか。

“恋人”でもなかった。

『はい』って言った。

言った。雅実は。…忘れるものなのか。

それとも…その場しのぎで返事をしたのか。

雅実はそこから、品川さんの話を始めた。

なぜ、今、俺の同僚の話なのか…

彼女と接点など、ないはずなのに。

「…私と偶然出会った時、品川さんと一緒でしたよね?」

「ああ、そうだね」

「彼女に自分の背中、持たせてましたよね」

「ああ、そうだね」

どうでもいい話を続ける雅実に、意味も分からない。

「私がいたから、店を変えようって二人で出て行って…」

「今日だって…何で…彼女を連れて来るのか…ふ…」

……雅実の声が震え出す。

雅実の方へ向くと

…涙

これが雅実に、とって“どうでもいい話”ではない。それだけは分かった。

「ごめんなさい」

そう言って、涙の伝う雅実の頬に触れる。

「だけど…なぜ、泣くのか分からない。」

「…さっさと…“NO”出せばいいでしょ?なぜ、私に言わせるの?」

言わせる?

“NO”を!?

俺から!?何の為に!

「はぁ!?」

【はいはいはいはいはーい!ここで、休憩挟みまーす】

0の声掛けで、少し冷静さを取り戻した。

泣いてる女性に…

寄り添えない。その情けなさは分かる。

だけど…なぜ?