意を決して口を開きかけた時

【雅実、あっちのイケメン、会うんか?】

…え、ああ。

忘れてた。

「会わないよ」

チラリと田中さんの方を見てそう言った。

【うーん…会ってみたらどうや?】

「え、いや、ちょ!?なんで!?」

0はもう、分かってるはずだ。

なのに、なぜ?

【実雅以外にも“イケメン”はおる。それに…それくらいで駄目になるなら、成婚は無理やで】

……まぁ、そう、かな。

チラリともう一度田中さんの方を見ると

「会えば、何か分かるかもしれないね」

田中さんが無表情でそう言った。

「でも…」

「“少なからず”顔は…何年も、誰も当てはまらなかったんだろ?漸く俺が当てはまって、その人も当てはまった。会って、みたら?」

【比べる対象がいるって、分かりやすいもんやで。向こうさんにも、マッチング中ってことは伝わる。向こうにも会うかどうかの選択肢はあるし、返事しときます】

「…え、はい」

それきり、田中さんは黙ってしまった。

だけど、0がそう言う限り何か考えがあるのかもしれない。

折角の決心が萎み、微妙な空気が残ったけれど

【OK、早速今週、会ってみて下さい。…それでまた報告してやって、実雅に】

「…はい」

何この、表立っての、後ろめたさ。

「…送る」

そう言って田中さんが立ち上がった。

繋ぐ手が、いつもより少し…強かった。