ヤングコーン!!

繋いだ手を振りほどこうとぶんぶん振ったけれど、離して貰えず

「そんなに食べたい?じゃあ、はい」

またしても、目の前にヤングコーン

彼の腕をガシッと左手で固定し

フォークごと奪い取ろうと格闘する。

【どんだけ、ヤングコーン好きやねん】

ついに0にそう言われ

【アーンせぇ、アーン。何なら俺がしたる】

「お前は、手も口も無い!」

田中さんが、珍しく素早く0に言い返す。

【で、どんだけアーンさせたいねん、お前は】

「違うね、俺は手を離したくないだけだ」

あ、アーンか。

そうか、そらそうか。

手を離したくないとなれば、そうか。

でもフォークなら左手でもいけそうな。

あ、チャンス!

田中さんが0に気を取られているうちに彼の手のヤングコーンを口に入れた。

「美味しい…」

「そんなに好きなんだ」

……ここまでしといて何だけど

そこまで好きでもなかったんだけど…

「うん」

そう答えるしかなかった。

「じゃ、どうぞ。最後の1個」

彼が目の前に差し出したヤングコーンに口を開けた。

…たった今、ヤングコーンが特別な食べ物になった気がする。

「俺も、好きになったな」

この前と同じ…あの川辺で見た時と同じように彼は微笑んだ。