翌日、待ち合わせに先に着いていたのは、いつも通り田中さん。

そして、私の手からゼロを受けとると、いつも通りに0を合わせた。

続く沈黙を破ったのは……

私でも田中さんでも0でもなく……

「…お話、終わりました?」

にっこり笑って田中さんの後ろから品川さんが顔を出した。

「…まだ、今から。」

田中さんがそう答えた。

「あ、じゃあ…待ってようかな。」

そう言って、私の方を見て、そのまま睨むように見据え

田中さんに

「…長くなりそうだから、報告は明日にでも、ね?」

そう言って微笑み、出て行った。

ふっ、…何あれ。

酷い。

言われなくても、終わらせる。

急かさなくても。

田中さんだって、わざわざ彼女を連れて来なくてもいいのに。

「…解消して下さい。それ。」

0を指差して言った。

「……」

田中さんは分かっていたのか、0に手を伸ばした。

【待て、待て、待てーぃ。】

静かな店内に響いたのは…

0の声。