ロマンスの王子様

雰囲気からしてみると、若い頃は相当なまでのイケメンだったんだろうな。

そう思いながら、
「いらっしゃい」

奥原さんとお父さんを迎えた。

「君が賢志郎のお嫁さんだね?」

お父さんが私をじっと見つめると、声をかけてきた。

「はい、そうです」

私は返事をすると、
「初めまして、奥原賢志郎の妻の明穂と申します」

自己紹介をして頭を下げた。

「なかなかのお嫁さんだね。

実家が芸者小屋を営んでいるせいもあってか、とても礼儀正しい」

「あ…ありがとうございます」

そんなことは言われたのは初めてだったので驚いたが、すぐにお礼を言った。

「親父、こんなところで立ち話もあれだから中に入ろうよ」

奥原さんが中に入るように促したので、
「ああ、そうだな」

お父さんは首を縦に振ってうなずいた。

「どうぞ、お入りください」

私はお父さんを家の中に迎え入れた。