ロマンスの王子様

当日を迎えた。

「よし、こんなもんでいいか」

一通りの掃除を終えた私は息を吐いた。

奥原さんはお父さんを迎えに空港へ行っている。

確か、2時に飛行機が到着すると言っていたからもうそろそろだろう。

「お茶菓子は今朝デパートに行って買ってきたし、お茶も結構いいのを買ったし…」

後はお父さんがくるのを待つだけだ。

ピンポーン

そう思った時、玄関のチャイムが鳴った。

「きた…」

最後に自分の格好を確認する。

服は紺色のワンピース、髪はハーフアップにしてシンプルなデザインのバレッタで留めた。

うん、特に異常はないな。

「よし」

私は深呼吸をすると、玄関へと足を向かわせた。

ガチャッとドアを開けると、奥原さんとスーツ姿の見知らぬ中年男が立っていた。

ロマンスグレーの髪と背の高さからして、この人がお父さんなんだと理解した。