初耳だった。

まあ、聞いてないんですけど。

「父親は仕事一筋で家に帰ってくるのは月に1回だけ、運動会とか授業参観とかそう言った学校の行事にも出てくれませんでした。

母親も多趣味な人で出かけることが多かったので、家にいませんでした。

兄弟姉妹もいなかったので、家政婦が作ってくれた食事を1人で食べていると言う生活でした」

そう話をした奥原さんに、
「それはそれは…」

芳樹さんは何も言えない様子だった。

「今は先ほどのように仕事で一緒に食事をする機会はありますけど、やっぱりこうして身内と一緒に食事を楽しみたいなと思ってます。

温かい料理を囲んで、日常であったほんの些細な出来事を話ながら食事をしたい――それが僕の夢です」

奥原さんは言った。