私は、脱いだ上着を椅子に掛けながら、座り彼の目を見つめる。
(一体、何を聞かれるの。)

「お前、名前は?」

「綾里」

私は、警戒しながら彼の問いに答える。

「どこから来た?」

「東京だけど..」

眉をひそめて、少し考えるような表情をした後、

「聞いたことないな。綾里、お前はやはり異世界からの来訪者だろ」そう呟く。

「本当に、現れる日が来るとはな。今まで、会えた者は、数少ないと聞いたが。」

彼は、驚いた様子で、考え込んでいるようだった。

「私が、異世界から?そうだとしたら、ここは、どこなの。
貴方は誰なの?」

彼の言っている事が呑み込めず、次々に質問していく。

「ここは、ルーヴ・エノワール。人口は、2万ちょっとの小さな国だ。
どうやって、お前がここにたどり着いたかまでは、分からないが。
綾里、お前がここに呼ばれたのには、理由がある。
古くからの言い伝えによれば、今日は、スエテの日。誰かが、叶えたい事をお前に願ったんだ。
お前は、その者の願いを叶える事ができた時、お前の願いも叶う。」

それを聞き、私は帰れることができるかもしれないという喜びを感じた。
「それなら、元の場所に帰る事も!」

「ああ、できるだろう。だが、それには期限がある。」

続く。