えへ。

思わず頬がゆるんでしまい、伊藤くんが眉を寄せた。

「なんかいいことでもあったの?」

「え、ううん、そういうわけじゃ!」

「青野さんって、思ってた以上に表情豊かだよな」

「そう、かな? あたし、基本人見知りだし、仲良くなった人の前ではよく喋るけど、昔から男の子ってなんだか苦手なんだよね」

だから表情がうまく作れないというか、どんな顔をすればいいのかがわからない。

「じゃあ俺らは、仲良くなってるってことじゃない? だったら、俺はうれしいけど」

「え?」

伊藤、くん?

「あ、ほらあっち! チョコバナナが売ってる!」

伊藤くんは意味深なことを言い残して、チョコバナナが売ってるテントの下まで走って行く。

「おーい、青野さんも来いよー!」

手招きされてあたしは伊藤くんのあとを追いかけた。

単純にあたしと仲良くなりたいって思ってくれただけだよね。だったら気にすることはないのかも。

「ほい、青野さんの分」

目の前にヒョイと差し出されたチョコバナナ。

チョコの上にカラフルなトッピングが乗っていて、ハートや星の形のトッピングまであった。見た目がキュートでとてもかわいい。

「あ、ありがとう」