「あ! 青野さん、おはよう。この前はマジでごめんな」
宮間くんはあたしたちのところにやってきて、申し訳なさそうに顔の前で両手を合わせた。
「きれいに落ちたから、大丈夫だよ」
「あ、クリーニング代出すよ。いくらだった?」
「ううん。ちょうどベストもクリーニングに出したかったし、いい機会だったから」
「マジ? 優しいね、青野さん」
「え、そうかな?」
「とにかく俺は救われたよ。親にはおまえの小遣いから出せって言われたからさ」
「あは、そうなんだ」
「でしょ? ひどい親なんだよ」
「おまえが悪さばっかりするのが悪い。叶ちゃんは、こんな奴にニコッとしなくてよろしい」
「なんだと、コジロー!」
「ほら、もういいだろ? 話が終わったなら、さっさと席に戻れよ。チャイム鳴るぞ」
「わかってるよ、じゃあな。青野さんも、マジでありがとね!」
爽やかな笑顔を残して宮間くんは席へと戻って行く。
あたしは前に向き直り、授業の準備を始めた。
でも、だけど。
ふと感じる視線。隣を見れば、斎藤くんが頬杖をつきながら無遠慮にこっちを見ていた。
「な、なに?」
「んー、べつに。なんも」
「そう?」
「うん」
だけど斎藤くんはなかなか視線を外してはくれなくて。
なに?
なんなの?
気になるんだけど。
「バーカ」
「え?」
なんだか、スネてる?
どうして?
わけがわからなくて、あたしは頭を抱えた。