「元彼にあっさり振られたことが超ショックでさ。こんなに簡単に手放せるんだ……って。その程度の気持ちだったのかなって考えたら苦しくて、切なくて。揺れてたあたしも悪いけど、でもおかげでホントに大切な存在に気がついた。

だけど、その時にはもう中学を卒業してたから、元彼とは疎遠になっちゃってたの。結局、前に好きだった人とは付き合う気になれなくて、離れてみて、初めて元彼の大切さに気づいたんだ……」

そう言って寂しそうに笑う真央ちゃんを見て、なんだか胸が痛かった。

「あの時、意地を張らずに別れたくないって言えばよかったって、今でもずっと後悔してる」

人はどうして失ってからじゃないと、大切さに気づけないんだろう。

失ってからじゃ、遅いのに。

黙り込んだ真央ちゃんに、どう返事をすればいいのかがわからなくて、なにも言えなかった。

「ごめんね、こんな話……叶夢ちゃんとは、初対面なのに」

「ううん……大丈夫だよ!」

「ずっと誰かに言いたかったの。誰にも言えなくて、苦しかった。だけど、叶夢ちゃんに言ったらスッキリしちゃった!」

「あたしでよければいつでも聞くよ」

知らない人に話してスッキリすることもあるよね。

「ありがとう! あたし、もう一度がんばってみる」

「真央ちゃん……」

「この二年ずっと悩み続けてきたけど、叶夢ちゃんに話して気持ちが固まった。うまくいく保証なんて一切ないけど……やれるとこまでやってみるよ!」

前向きで素直。

そんな真央ちゃんだったら、きっと──。