「そろそろ大丈夫かな?」

「うーん、とりあえず大通りに出てみよう」

恐る恐る、あたしたちは周りを気にしながら不審者のように大通りへ出た。そこにはたくさんの人が行き交っていて、目を凝らしてよく見ないとさっきの男がいるかどうかはわからない。

「あははっ、叶夢ちゃん、忍者みたいな歩き方になってるよー!」

つま先だけでそろりと歩いていたら、後ろにいる真央ちゃんに笑われてしまった。

「おまけにへっぴり腰だし。はぁ、なんだか力抜けたー。叶夢ちゃんって、超癒し系だよね」

「ええ? そんなことないよ」

「いやー、絶対そうだよ。美人でクールだけど、反応とか、やることがいちいちかわいいの」

真央ちゃんの言葉には悪意をまったく感じないから、すんなりと胸の中に入ってくる。これは褒め言葉と受け取っていいのかな。

「もちろん褒め言葉だよ。ふふ、考えてることもわかりやすいね」

よく笑う太陽みたいに明るい子だな、真央ちゃんは。表情がコロコロ変わるし、話していて楽しい。

──グーッ

辺りに豪快な音が響いた。そういえば、お腹が空いてたんだ。すっかり忘れてたよ。

「ご、ごめんねっ! 恥ずかしい」

「あはは、赤くなってる叶夢ちゃんも超かわいい!」

「わ、笑わないでー、恥ずかしいよぉ」

「ごめんごめん、あまりにもギャップがありすぎてさ。あたしもお腹空いてるし、今からなにか食べに行かない? あのナンパ男が駅うろついてたらやだし。あたし、こっから電車なんだよね」

「そうなんだ。それは怖いね。じゃあ、ぜひ食べに行こっ」

真央ちゃんの提案にあたしは迷うことなく頷いた。ずっと昔から友達だったかのように壁がなく、自然体な真央ちゃん。

不思議なことに、出会い方が特別だったからなのか、人見知りなあたしでもすんなりと受け入れることができた。