さらにスピードを上げて走った。
く、苦しい。こんなに全力疾走したのは、いつぶりだろう。
途中で細い道を曲がり、入り組んだ路地に入る。
女の子はただやみくもに走っているだけなのか、目的があるのかはわからない。
とにかくあっちこっち曲がって、駅からもかなり離れた場所までやってきた。
「はぁはぁ……もう、大丈夫じゃない?」
これ以上は、あたしが持たない。
とにかく一度止まって休みたいよ。
「だと、いいんだけど……はぁ」
体力に自信があっても、さすがにこれは誰でも疲れる。動揺していれば、なおさら。
あたしたちは後ろを気にしながら、ゆっくりとペースを落とした。
恐る恐る後ろを振り返ってみたけど、足音や声は聞こえず、人の気配もない。
「まいた、かな?」
「う、うん! あたし、これ以上はちょっと」
「あたしもだよ。久々、超走ったー……!」
そう言って、女の子は大きな息を吐き出した。あたしも肩で息をしながら呼吸を整える。
とりあえずもう男の声は聞こえなくなった。
──ホッ
よかった。
「超しつこかったね……はぁ。こんなに嫌がってるんだから、引き際を考えろってのよ!」
プゥと頬を膨らませながらも、女の子もホッとしたような表情をしている。



